カルケドンでの悲劇(230824)  第3話

土耳古2023

その後はエミニョムという連絡船が出ている港に向かった。イスタンブールは大きく分けると新市街・旧市街・アジア側の3つの地区からなっている。新・旧市街がヨーロッパ側だ。新・旧市街はガラタ橋という有名な連絡橋で繋がっており、トラムや徒歩で移動できる。旧市街がさっきまで居た宮殿やモスクがある場所だ。アジア側に行くには連絡船を使うのがメジャーだった。旧市街のエミニョムからカドゥキョイというアジア側の港に向けて出港した。ボスポラス海峡をクルーズしているという事実に、遠い地から1人で旅に出たという胸の高鳴りを感じた。風は心地よく景色も素晴らしかった。

カドゥキョイという地はカルケドンとも呼ばれる。451年、キリスト教の宗教会議であるカルケドン公会議が行われた地である。単性論というイエス・キリストの人性と神性についての考え方の一つが異端とされた。世界史で習ったので行きたかったのだが、特にやりたいことはなかったので取り敢えず帰りの船の時間を見て、港から離れて街の方に歩いた。緩やかな登り坂の両脇にお店がずらりと並んでいた。トルコはこういう場所が多い。イメージとしては京都の清水の参道がわかりやすいかもしれない。美味しそうなスイーツがショーケースに並んだお店が目に留まった。奥が気になったので進むことにした。色々みた上で、お昼ご飯にケバブを食べた。バケット生地のパンに肉を挟んで食べるスタイルのケバブだった。とてもおいしかった。文具兼おもちゃ屋さんなどもあって楽しかった。

色々歩き回っていると、カップルが話しかけてきた。女性はヨーロッパ系の顔だが、ヒジャーブというスカーフで顔を覆っていた。カナダ人ムスリマなのかなと思った。話していると急にカナダの紙幣を見せ始めた。そして日本のお金も見せてと言われ一万円札を3枚見せてたら喜んでた。そして3枚を男と女が手に取って見始めて、結局返された。返されたのは2枚だった。気づいた頃にはもう奴らはいなかった。やられたーと自分の危機感の薄さに悲しくなった。どう考えても怪しかった。そのあと別の場所でもヒジャーブを纏った女性からお金を見せてと言われた。奴らへの恨みをその人に晴らすようにNOと言ってやった。もっと英語が器用であれば皮肉の効いた嫌味まで言ってやりたかったと思うほど最悪な気分だった。気を取り直して時計を見るとあと少しでイスタンブールに戻る船の時間だった。最初に見たスイーツがどうしても食べたかったので、寄ることにした。たくさんのケーキがあったが迷っている暇はなく、目に留まった苺のタルトにした。とても甘くておいしかった。急いでお店を出て波止場に向かうとギリギリで間に合った。カドゥキョイで走っているのは自分くらいだったので、なんだコイツと思われたかもしれない。エミノミュで下船し、予定通りイスタンブール旧市街に戻ることができた。

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