コナンの映画と事件

コナンの映画を観るために駅の映画館へ行くことにした。駅前の大きな交差点で信号を待っていると、ジーンズに深い緑色のよれたTシャツを着たボサボサな茶髪のおじさんみたいな人がふらふらと歩いてきて、自分の目の前で急に倒れた。医学生として使命を感じたので、近づき仰向けにして大丈夫ですか？と声をかけた。相手の体に触れて女性であることをこの時初めて知った。呼吸はあったが、反応がなく意識もなさそうだったので取り敢えず救急を呼んだ。駅前の交差点で人が倒れてます。駅前にはいくつか交差点があるらしかったが、引っ越してきたばっかで土地勘はなく、見えるものを列挙して伝えた。そうして場所を伝えるのに苦労してる間に、女は立ち上がった。救急のオペレーターに立ち上がりました！と伝えると本人に変わってもらえますか？と言われた。女に、電話変わってもらえますか？と聞いても無視された。女は平然とまるで何もなかったかのように信号を待つ素振りを見せた。困ってしまったので女の耳元に携帯を当てようとすると手を払われた。そして女は電話をし始めた。自分は救急に、拒まれてますと伝えると、本人が拒絶しているならば救急車は手配できません。と言われたのでそれならば大丈夫です、すみませんと謝って電話を切った。そして女の電話に耳を傾けると、女は警察に電話をし始めた。なんか変な人にしつこく絡まれています、と言っていた。早く映画館に行きたかったのに足止めを喰らった。ここで女の通報を無視して映画館に行くと事件となって面倒になりそうだったので、一連の出来事を見ていた女性3人組に警察官が来るまで証人として残ってもらった。華金で飲みに行く予定だったらしいので申し訳なかった。警察官が来るまで時間がかかり、待っている間に心配した子連れのお母さんが話しかけてくれた。倒れた女はこういうことを常習的にやっているのかもしれないということだった。気にしないで大丈夫よ、せっかく善意で対応したのに酷い目にあったね。と慰めてくれた。一方で女の方はなかなか警察官が来ないので、おせぇんだよとか倒れてねぇしとかを呟きながら電柱を何度も何度も蹴っていた。変な人だなぁと思った。結局パトカーが2台来て、警察官1人が自分のところ、3人が女のところで事情聴取をはじめた。一連の出来事を伝えると、名前・年齢・職業・住所・電話番号を聞かれた。善意でしたのにかわいそうにと警察官にも言われ、すぐに解放された。女の方はまだ警察官と話をしていた。横断歩道を渡って駅に向かおうとしたところで女の視界に入ってしまい、お前の顔覚えたからな。覚悟しとけよ。という捨て台詞を言われてしまった。コナンの映画はとても面白かった。エンディングの「美しい鰭」を聞いていると急に現実に戻った気分になり、どうしてこんな目に遭わなければならないのかと涙が出た。レイトショーだったので帰りは命の危機を感じながら夜道を歩いた。